報告*10/31(日) Zoom開催「給食の話」
- kotosyoku
- 2021年10月31日
- 読了時間: 9分
更新日:2021年12月1日
コトショクが世話人となり講演会が開催されました。

Zoom開催・第50回埼玉リレーカフェ「給食の話」
~子どもたちのために、もっと安全で、もっと美味しい給食を~
日 時:2021年10月31日(日) 14:00~16:15
お 話:高橋優子さん
1989年より小川町在住。
1999年より日本の有機農業の草分けと言われる小川町霜里農場・金子美登氏とともに有機農業の普及に努め、有機農業を基盤とした自然と人、人と人が有機的につながる町づくりを目指して活動中。
2021年1月より「小川町の学校給食を考える会」を同志と立上げ、小川町の学校給食の地場産化・有機化を目指している。NPO生活工房つばさ・游 理事長。げげNPO全国有機農業推進協議会理事。
47名の参加で、有機農業とは、有機給食とは、その課題は、そして私たちが何をしなければいけないのか、お話していただきました。
お話しのあとでブレイクアウトルームに別れ、その後チャットに書き込まれた質問に答えていただき、全体で質疑応答となりました。
チラシはこちら→ click
=まとめ=
■なぜ学校給食の有機化が必要か
・農薬の出荷量と特別支援児童数は、推移が殆ど並行している。(環境省や文科省が出している資料で確認)
・OECD加盟主要国の農地単位面積当たり農薬使用量(2008年)の断トツの1・2位は韓国・日本であり、自閉症スペクトラム障害の有病率(2012年)も断トツの1・2位が韓国・日本です(木村–黒田純子『地球を脅かす化学物質―発達障害やアレルギー急増の原因』より):http://www.com-info.org/medical.php?ima_20180904_kimura_kuroda
・学校給食用パンのグリホサート(農薬・除草剤 )残留調査からも、外国産小麦使用のパンからほぼ100パーセント検出されている。
(2019年 農民連食品分析センターの調査より)
知らないうちに食環境が悪化している子どもたちの健康を守るため:
・「有機食材続ければ、体内の農薬大幅削減」
(福島のNPO法人の調査より、2019年7月1日付朝日新聞)
・有機野菜は人を元気にする:2021年日本有機農業普及協会主催の栄養価コンテストの結果から、有機野菜は甘くて抗酸化力が強いことが解明された。
・有機野菜と慣行野菜の成分を比較してみても糖度、栄養分共に有機野菜の方が高い
(日本食生活学会誌 vol24 No.2 (2013) 表7 ホウレンソウの成分分析値 参照)
■今、なぜ、全国の学校給食有機化なのか by高橋優子さん
日本の農業は高齢化と後継者不足で衰退の一途を辿るばかり。
景観は悪化しコミュニティも衰退している。
日本の食料自給率はカロリーベイスで37パーセント。
農業生産に使われるエネルギー(石油やガソリン)の自給率はほぼ0%。
今年はコロナ禍のせいで、外食産業が衰退し、 お米が135万トン余ると予想されている。
米価は下落し(1kg 140円くらい!)生産意欲を失った農家の離農が進んでいる(農業従事者は2015年から2020年の5年間で46万人減少し152万人となった:
・環境省のHP「地域循環共生圏(日本発の脱炭素化・SDGs構想)」→地産地消の有機農産物のしっかりした販路としての学校給食が持続可能な地域の経済圏を作ることができる。
・農水省のHP「農業・農村の有する多面的機能」→ 農薬を使わない有機農業が多様な生物を育み、多様性のある持続可能な環境を作ることができる。
・2021年5月12日に農水省は「みどりの食料システム戦略〜食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現〜」を策定。2050年までに目指す目標を7項目掲げ、その内の一つが「耕地面積に占める有機農業の取組面積を25パーセント、100万haに拡大」とある:
・令和4年度 概算要求の概要(2021年9月大臣官房 環境バイオマス政策課作成):「有機農業産地づくり推進」の項目の中でオーガニックビレッジ構想が展開されている:https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/midori/attach/pdf/index-52.pdf
JAcom【22年度農業予算概算要求】みどり戦略『始動』水田活用、農村整備も:
食料主権の確立や気候変動対策としての有機農業の普及拡大のための好機として捉え、
有機農産物の確かな販路として学校給食の有機化が有効。by 高橋優子さん
■学校給食有機化の三大課題
①安定供給
・日本の有機農業の取組面積は、全耕地面積の0.5% (約23000ha(2017年)。
有機農家数12000(内JAS認証取得戸数は4000)は総農家数(2,528,000)の0.5%(2010年):
「有機農業をめぐる我が国の現状について」2019年7月26日:
・【有機農業をめぐる事情】2018年12月農林水産省生産局農業環境対策課: 国内で有機JAS認証を取得した 有機農産物は年間約6万トンで、H28(2016)年度では約7割が野菜、2割弱が米。国内の農産物総生産量のうち有機農産物が占める割合は、茶は4〜5%だが、野菜や大豆は0.3〜 0.5%、米や麦は0.1%に過ぎない状況: https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/kazyu/h30_12/attach/pdf/index-16.pdf
・従って有機農家も有機農産物も総数が少なく、安定供給が難しい。
→地元の農家や農業を知り、有機へ育てることがポイント。
②衛生面
・ 集団食中毒予防のため学校給食法をどうやってクリアするか(虫や泥の問題)
安全な野菜をどうやって納品するか
(学校給食法の細則の対応:使う食材はその日に納品、タマネギは大きさも指定等)
③経費負担
・有機化による負担増を誰が負担するか。
現在は給食費は保護者負担。コロナ禍で自治体も財政難。
→明石市は保育園の副食費の無償化を実施(国の保育料無償化実施を機に)
→ 企業の寄付を募って無償化をはかっている地域もある by 中村陽子さん
→ コロナ禍の子育て世代の経済的負担を軽減するために、期間限定の小学校給食費の無償化を実施している市もある(大阪府八尾市):
■その他
①「有機農業」という言葉にはどういう意味があって、誰がいつから使い始めたか。
「有機農業」という言葉は、1971年に「日本有機農業研究会」を設立した一楽照雄氏によって生み出されました。漢詩の一節である「天地有正気(天地に正気有り)」という言葉をヒントに、「天地有機(天地に機あり=自然界には“機”、つまり、“仕組みや法則”があるという意味)」という言葉が生まれ、自然の摂理に沿って作物を育てる農業が「有機農業」と名付けられたのです。:
②有機農業・有機農産物とは
我が国では、平成18年度に策定された「有機農業推進法※注4」において、有機農業を「化学的に合成された肥料及び農薬を使用しないこと並びに遺伝子組換え技術を利用しないことを基本として、農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減した農業生産の方法を用いて行われる農業をいう。」と定義されています。
注4 有機農業の推進に関する法律(平成18年法律第112号):
※因みにホームセンターなどで購入する家庭菜園用のタネが着色されているのは、化学薬品による消毒。
③有機JAS認証とは
平成18年12月に制定された「有機農業の推進に関する法律」に基づき、農林水産省は平成19年4月末に「有機農業の推進に関する基本的な方針」(以下「基本方針」といいます。)を策定いたしました。基本方針は、農業者が有機農業に取り組むに当たっての条件整備に重点を置いて定められました。
また、平成26年4月に新たな基本方針を策定いたしました。新たな基本方針においては、有機農業の拡大を図ることとしています。
今後、有機農業者やその他の関係者の協力を得つつ、地方公共団体とも連携して施策を推進していくこととしています。:農水省https://www.maff.go.jp/j/jas/jas_kikaku/yuuki.html より
④高橋優子さん(「小川町の学校給食を考える会」主宰)からの提言と試み。
・学校給食に関わる機関・部署・団体・人は多岐に渡り、それらを繋げること
小川町に要望書を出す前にヒアリング調査:学校給食センター、教育委員会、農林課、JA、青果組合、農家等
・有機食材を公共調達として学校給食に導入してもらえないか と農水省に働きかけたら、環境省の管轄と言われる。環境省と交渉検討中。「グリーン購入法」という法律では有機農産物・加工品を物として指定できないが、国の機関に入っている食堂の業者に有機食材を使ってほしいということはできるとのこと。因みにフランスではエガリム法という法律で、公共調達の中に有機農産物も含まれているので学校給食は地元の有機農産物が使われている。
・農水省のオーガニックビレッジ構想にある、「2025年までに100市町村でオーガニックビレッジを宣言」に小川町が名乗りを挙げられるように働きかける。来年4月には市長選。
・外国の有機食材は広大な田畑を使って生産されるので、輸入価格も低価格になる。ただし、アメリカで広大な有機農場を視察した時に味わったイチゴの味は、不味かったそう。価格の安い輸入有機農産物ではなく、地産地消の有機農産物での学校給食有機化を目指すべき。
・気がかりなのは、若い世代に食の危機感が薄いこと。
⑤ 中村陽子さんからのお米と農家を守る話
・米飯給食を100%有機米にすることに成功したいすみ市は、市長と行政官というタッグがあって、短期間で実現。トップダウン方式も働きかけ方次第なので、これからも工夫していきたい。高橋優子さんの下からの市民の力を高めていく方式と両方で。対立を生まない有機化の方向性を模索。
・稲作有機化の難しさは除草問題だが、民間稲作研究所の稲葉さんのアドバイスでいすみ市は成功。除草対策も松本自然農法センター方式、木村方式もあり、それぞれの土地にあった指導があれば乗り切れる。稲葉光圀さんが亡くなって、民間稲作研究所のサポートが必要な今、国の支援が得られない現実に危機感あり。
・泉大津市(大阪府)の南出市長は、有機農家を公務員にしたいという構想あり。農家の所得補償にもなりユニークな発想。
・学校給食の有機化を目指す各地域の、生徒数と必要な米飯給食のお米の量を計算して、それをその地域で賄うためのコメ農家を具体的に策定していく試み。
・映画会情報:
若い女性(母親を含む)の関心を広げるには、オオタビン監督の「いただきます」シリーズのⅠとⅡがお薦め。一般には、「食の安全を守る人々」。
⑥ ブレイクアウトルームから出た話
・NPO法人「見沼の里」代表の水野さんからの話
この法人は、有機農産物の栽培を通じて見沼田圃の環境保全に努め、食の安全に寄与するとともに、自然との共生に努め、耕作放棄地の再生、雇用機会の創出を通じ、地産・地消の循環型の社会を創造することを目的とします。:https://minumanosato.com/
さいたま市の小中学校生徒数は約10万人。学校給食を有機にという思いから立ち上げたNPO法人なので、さいたま市長にも提言できればと思っている。来年から1.3haで有機米作りを始める予定。
・映画「いただきます」を観た川口市の子育て中の生活クラブに入っている主婦の方:
早速川口市に学校給食の有機食材化について問い合わせてみたら、つれない返事。周りの人もあまり関心がない状況。
このことについて中村陽子さんが、一人で立ち上がるところから始めるのが、効果的という話。
・上尾市の「学校給食費無料化をめざす上尾みんなの会」の子育て中の主婦であり代表の井上さんが、上尾市長選に向けて、公開アンケート作成にあたっての助言をコトショクにという話。
=まとめ終わり=
地元で給食の食材の地場産化の取り組みを始めた高橋さんの記事↓

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